不安もパニックも、さようなら 不安障害の認知行動療法:薬を使うことなくあなたの人生を変化させるために
- 作者: デビッド・D・バーンズ,野村 総一郎,中島 美鈴,林 建郎
- 出版社/メーカー: 星和書店
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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不安を感じる以下の4つのモデルがある。
- 認知モデル
- 曝露モデル
- 隠された感情モデル
- 生物学モデル
本書ではこのうち認知モデル、曝露モデル、隠された感情モデルに基づく認知行動療法の技法を解説する。著者は生物学モデルに基づく薬物療法に批判的で、認知行動療法による治療の方がより効果的で優れていると主張している。
認知モデルは人の気分はその人の考え方に基づいているので、考え方を変えることで気分を変えることができること、またそのような不安な気分にさせる考え方は非論理的である、というモデルである。したがって、このモデルでは、普段の考えに潜む歪みを見つけ出し、合理的な思考によって非論理的な思考を打破することが心理的な改善につながる。
曝露モデルは、不安を感じる原因は不安を感じる対象を避けているためだ、と説明する。このモデルでは、自分を不安に曝すことが不安の解消に繋がる。
隠された感情モデルでは、無意識に抑圧している感情が不安として表出する。不安の真の原因を見極め、問題を解決すると不安が解消する。
素人の雑な感想を言うと、総じて反フロイト的(隠された感情モデルでも、過去のトラウマ的な出来事が原因となっていることは少なく、例えば仕事に不満を持っているが、対立を恐れて上司と話ができないことを抑圧してしまっているなど、現在の問題であることが多い)で、今直面している問題を合理的な立場から解決するための方法論が主体となっており、アメリカ的だと思った。自己啓発っぽさもある。
その日の気分を定量的に観測するためツールである日常気分記録表をはじめ、各モデルに基づく40の技法が紹介されている。また、不安の再発を防止するためにはどうすれば良いかについても書かれている(不安は必ず再発する)。
例 メリット・デメリット分析は、ある否定的思考のメリットとデメリットをすべて並び立て、どちらの方が自分にとってより大きいかを点数にして比較する技法である。この技法が有用なのは、否定的思考にもそれを信ずるだけの意味があることを理性的に評価した上で、それでもメリットが上回る場合、否定的思考に囚われる根拠を失い、物事に対して前向きになれる点にある。
技法が多すぎるというか似てるやつも結構あって整理されてない印象をもってしまった。とはいえ実に網羅的であり、不安と戦っていくための武器は十分揃っている。
不安症状を改善することは容易ではなく、読者には相当の覚悟が要求される。症状を改善するとは、つまり自分を変えることであり、それは不安がもたらしてくれていたメリットを手放すことでもある。不安との戦いには勇気が必要である(第四章 本当に変わりたいですか?)。さらに、不安を言葉で表現することが療法の基盤ともなっているので、読者への問いかけが数多くあり、その度に実際に紙に書くことが求められる。各技法は読めば身につくようなものではなく、訓練を通して理解していくものである。
不安への陥り方には人によって異なるパターンがあり、個人がそれぞれの不安からの立ち直り方のフレームワークを構築することが、この本の目的の一つにある。